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講演会要旨報告

 

就職活動はどう変わったか

~最新就職活動事情とその問題点~

 

株式会社人材研究所 代表取締役

曽和利光 氏

 人材研究所の曽和と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 簡単に自己紹介をさせていただきますと、私は当時Cコース、教育心理学の卒業で、子安先生の研究室でやらせていただき、1995年に心理学科を卒業しました。その後、リクルートに入りまして、リクルート自体の人事を15年ぐらいやっていました。本当は15年というのはうそで、一回辞めて、もう一回入っています。一回辞めたときは、教育学部の科目等履修生という立場にならせていただいて、授業に潜り込んで、若い人たちと授業を受けていました。もう一回リクルートに戻り、その後はリクルートの採用の責任者とかをやっていました。あとは生命保険会社とか、不動産会社の人事のトップをやりまして、2011年、ちょうど東日本大震災のときに私はちょうど40歳で、ユングが昔「40歳というのは、人生の正午だ」というふうに言っていたかと思うんですけれども、さらに地震とかがあって結構人生観が変わったということもあり、いままでやってきた経験を生かし、多くの人に対して何かできないかということで独立して、いまは人事のコンサルティング、基本的には実務のコンサルティングをやっているような会社で働いています。
 研究されている方とのお付き合いというのもあって、経営系の方が多くなってきているんですけれども、私自身は普通の、一介の実務屋さんとして、いろいろな企業をお手伝いしているといます。対象としている企業さんもばらばらで、本当に大きい、日系大手といわれるような自動車会社とか、総合商社とか、広告代理店とか、金融機関とかも担当させていただいていますし、いわゆるIT企業を中心としたメガベンチャーと言われるようなところもだいたい軒並みお客さまです。もちろん、中堅、中小企業とか、スタートアップもお客さまですし、最近だともう民間企業だけではなくて、職員の方々の人事制度をつくらせていただいたりとか、官公庁、病院とかの人事や採用のお手伝いもしていします。
 今日は就職の話なんですけれども、本当は私は採用側の仕事をしています。企業とか、そういういろいろな組織の採用とか人事の側のお手伝いをして、簡単に言うと、どういうふうにしたら、いまこの人手不足の中で、その会社にとっていい人が採れるのかということをやっている感じです。
 いろいろな本もいままで17冊ぐらい書いたんですけれども、人事向けなので全然売れません。だいたい労働力人口の1%ぐらいしか人事がいないというのが言い訳なんですけれども、1万部売れたらいいとこみたいな感じで、夢の印税生活みたいなものは程遠いです。
 あとはもしよろしければ、『日経新聞』から就職活動のことについての執筆を依頼されて、「就活のリアル」という結構生々しい連載をしていますので、今日のお話と併せてご覧いただけますと幸いです。いまの就活、人と企業がマッチングされていく日本全国における適材適所を実現するための、就職とか採用という社会システムが理想的な状況になっているかというと、全然そうでもない。ウェブでも見られますので、もしよかったらご覧ください。
ということで、就活の話のなかでも、私が携わっている中の一つのテーマが、特に新卒採用です。私も教育学部で教育心理をやっていたということもありまして、人事のいろいろな分野の中でも新卒採用をずっと三十何年間ウォッチし続け、いまでも中心的に関わっていますので、この新卒採用、学生さんから見ると就職活動がどう変わったのかを、いろいろなデータもベースにしながらお話しできればと思っております。
 それでは最初なんですけれども。新卒採用市場の変化をマスで見ると、ご存じだと思うのですけれども、人手が足りない状況になっています。
 いま、だいたい日本において、労働力人口は6800とか6900万人とかっていわれていますけれども、それが2030年には341万人、2040年には1000万人を超える人がもう足りなくなってきているという状況です。
 つまり、本当だったら7000万人ぐらいいなければいけないところを、1000万人ぐらいいないということですね。7人採りたいところを1人は欠員というような状態で社会を回していかなければいけないということになります。
 ただ、これは平均なので、大企業とか有名企業とか人気企業はちゃんと埋めてくると思うんですね。だいたい大企業というのは、全部の会社の数でいうと0・3%にも満たないです。働いている人の数でいうと30%ぐらいなんですけれども。
 ということは、中小企業さんは7人に1人足りないとかだけじゃなくて、たぶん3分の1ぐらいは足りないみたいなことになってくるんじゃないかなという現状でございます。
 絶対数が足りないということは全部の会社とか組織が、人手を満たすということは原理的に不可能なわけですね。なので、例えば機械化であったり、シニアの小さな活動という、仕事と言うよりはちょっとお手伝いみたいな感じでやっていただくとか、ワーキッシュアクトというのも、仕事っぽい行動みたいな感じとか、いろいろなともかく細切れのワークみたいなものも集めて、やっていかないといけないんじゃないかみたいなことはいわれています。
 ただ、まだまだ各企業とか組織は採用を頑張るというところでやっているということで、いま新卒の求人倍率というのは結構高止まりしているという感じですね。
 求人倍率というのは、就職を希望している学生さんの数の何倍、求職者数があるかということです。最新の数字で一番右の数字が1・75倍と書いています。つまり、だいたい学生の数の2倍近く席があるということなので「売り手市場」と言いますね。学生さん側が強い新卒採用市場になっているということです。

 ちなみに、これは四半世紀にわたる新卒の求人倍率を書いていますので、一番左側の上に上がって3倍近くになっていますけれども、これがバブルのときですね。3倍というのは異常で、内定者の旅行がハワイ旅行だったりしたような時期ですね。いまはまだそんなことはないんですけれども。
 私が卒業したころっていうのは、この一番下の、崖を崩れ落ちて1・08倍とかになっているような、「氷河期」とか「人生再設計第一世代」って呼ばれていた時代なんです。そういう本当にろくな目に遭ってこなかった時代がわれわれですね。実際に大企業に入った率も低いですし、正社員比率も低いです。
 リーマンショックのあたりが1・2倍で、もう一回アベノミクスとかで上がってきて。と思ったらコロナショックがあってということなんですけれども、1・5倍台であまり下がらずに、いまに至るという感じです。
 平均で見ても1・75倍ということなので、まあまあすごいじゃんと思うかもしれないんですけれども、これが業界によって全然違います。

 皆さんはどこの業界が一番人気だと思われますでしょうか。業界によってだいぶ違いがありまして、一番人気は一番下の金融業界です。金融業界は何と0・23倍です。つまり10人に2人しか入れないんですね。だから、全然買い手市場なんです。その後がサービスとか情報業。これはIT、広告、メディアや、インフラ、つまり鉄道、電気、ガスといった人気企業が入っているので0・36、3人に1人しか入れないわけですね。
 ところがメーカーになってくると、もう2倍を超えています。建設業は9・35倍、いま、いろいろニーズがあると思うんですけれども、9倍って、もう求人倍率と思えないような数字です。最後の流通業は「2024年問題」とかって言って、ドライバーの人たちに残業をどこまでしかさせてはいけないというのが、2024年からは駄目みたいな感じになったこともあると思うんですけれども、どかんと伸びて16・21倍ですね。このままいったら、通販とかでものを頼んでも、いまだとあした届くのが維持できていると思うんですけれども、いずれ全然ものが届かなくなる時代が来るんじゃないかと。業界での格差の激しさの数字的なところがこんな状況になっています。
 マスの数字はこんなものなんですけれども、簡単に言うと、学生さん側からすると、われわれみたいな氷河期みたいな状況ではないんですけれども、企業側からすると、逆にしんどいと、厳しいなと思います。

 そんな中で学生さんはどんな基準で会社を選んでいるのか、これはマイナビという就職の広告サイトが20年以上にわたって、会社をどんな基準で選んでいるかを、ずっと見ているデータです。この右肩上がりでいま一番なのは、安定している会社ということです。20年前はだいぶ低かったけれども、いまは半分ぐらいの学生が一番重視する会社選びのポイントは安定だというふうに言っているわけですね。
 じわじわ下がってきているのは「やりたいことをやりたい」ですね。これはどう評価するかなんですけれども、やりたいことができるようになってきたからというふうに考えてもいいかもしれないんですけれども、それだけ安定が上がってくるというのは、不安な世の中になってきていると言いますか、彼らの親世代というのが氷河期世代だったりするので、親のリストラを見ていたりするので、取りあえず安定しておかないとやばいだろうと。この30年間でサラリーマンの平均年収も数十万円下がっていて、実質賃金がもう25カ月連続で前年同月比割れということで、まだ下がっているんですね。絶対値だと上がっていたりするかもしれませんけれども、インフレ率とか加味した上で実質賃金を計ってみると、まだ下がっているんですね。学生さんからすると、やっぱり安定というのが重要になっている。
 あと、猛追しているのがもう1個ありまして、給料ですね。いま、新卒採用の初任給バブルが起こっていまして、この30年間ぐらいずっと新卒初任給はあまり変わらなかったんですね。20万円前半ぐらいみたいな感じがどこの企業でも、それは大企業でもベンチャーでもあまり変わらなかったんですけれども、いま30万円ぐらいに収れんしようとしています。 先ほど言ったメガベンチャーというところだと、IT業界とかも人の取り合いなので、すごい人気な会社は初任給が40万円とかします。なので、儲かっているからいいと言えばいいんですけれども、初任給バブルが起こりながら、先ほど言ったように実質賃金は対前年比25カ月連続でマイナスなんですよね、2年以上ですよ。これはリーマンショックを超えています。つまり、初任給の若手を採るために給料を上げるんですけれども、給料の原資は変わらないわけです。ということは、中高年以降の給料とかから、こっそり抜いてきているというか。若手重視でやっているんですけれども、最初だけ高い給料をあげて、その後は伸びないみたいな感じにしているんですね。
 皆さん、この流れをどう思われますかね。ただ、安定を求めては駄目ということはないんですけれども、実はこれは落とし穴があって、研究されている方だったら分かると思うんですけれども、ここに示している調査はもう20年間同じ調査 を継続してやっているので、調査の選択肢というのは変えられないんですね。実はこの調査の中には、「成長したい」とかの選択肢ってあまりないんですよ。
 ところが、リクナビの方でずっとやっている調査の方を見ると、「自らの成長が期待できる」という選択肢がが断トツで一番になるんですね。
 私の解釈でしかないんですけれども、今の若者は安定と成長、つまり寄らば大樹の陰が安定だというふうに思っているわけではなくて、自分に力を付け、どこに行ってもやっていけるように、自分の所属している企業というのもつぶれちゃっても、べつにどこでも転職していけるというふうになるのが、彼らにとって安定かなと思っています。なので、結構まっとうなことを最近の若者は考えているのではと安心していたりもしますし、実際に採用の実務をやっていると、これが決め手になることが多いです。採用側も、うちに入るとどんな人になれるよとか、どんな能力が身に付くよとか、どんなキャリアを歩めるようになるよということをちゃんと示さない限りは、学生さんに志望してもらえないというような状況になっているというのが、一つの安心材料かなと思います。
 他にも志向系の話をしますと、もう何十年もいわゆるBtoC企業さんに人気が集中しています。BtoCとBtoBというのは、Bはビジネスで、Cはコンシューマーですね。BtoC企業というのは、いわゆる最終消費者と接点のある、最終商品を扱っているような企業ですね。
 志向系でもう一つ、だいぶ変わっているのは、皆さん、うちの会社はグローバルに世界を股にかけて活躍しているんだぜと言ったら、それは学生にとってはプラスだと思いますか、マイナスだと思うでしょうか。なんとなくわれわれの世代だと世界を股にかけて活躍するってプラスのことだったと思うんですけれども、いまはどうもマイナスらしいです。海外志向の人材というのは希少になっていまして。これは産能大(産業能率大学)さんの調査でずっとやっていたんですけれども、2000年ぐらいのときというのは、海外で働きたくないという人は30%ぐらいだったんですね。いまは3分の2が働きたくないと言っています。だから、ここらへんの感覚が分からずに、「うちは海外へ行けるぞ」と言ったら、「じゃあ、やめときます」みたいな感じになるというのが今の学生さんかもしれません。これをもっと細かく見ると、なんかものすごくグローバルな仕事をやりたいんだけれども、日本でやりたいみたいなのが一番多いんですね。なんかよく分からないというか。
 ちなみに、ニュースとかでは東京一極集中と聞いていると思いますので、東京で働きたい人というのが増えていると思われるかもしれませんが、実は減っています。だいたい東京へ行きたいと言っている人は、いまの学生の1割ぐらいですね。他の大都市圏、仙台とか名古屋、関西、広島、福岡でプラス3割ですね。残りの6割は、それ以外の地方とか郊外で働きたいという感じなんですね。すごくこれは意外かもしれませんけれども、U・Iターンしたいとか、自分とはゆかりがなくても自然の豊かなところで働きたいという人は、半分ぐらいです。これは6000人ぐらいの調査でもそんなもんなので、結構大きな傾向かなと思います。それなのになんで東京一極集中になっているかというと、地方の企業がめちゃくちゃ採用が下手なんです。例えばコロナでオンライン採用というのが広まりましたね。つまりオンラインで面接をやったりとか、説明会をやったりとか。いまコロナがある程度明けたら、地方とか中小企業さんは「これでもう一回リアルに戻れるぜ」と言って、オンライン採用をやめていっているんですね。ところが、大企業とか東京の企業でやめているところなんてどこもありません。なんなら進化させているんですね。例えば会社説明会みたいなものをちゃんとスタジオで撮って、テレビ番組みたいなものを流しているわけです。にもかかわらず、地方とか中小企業さんとかはオンライン採用をやめたりする。となると、最終面接もいま普通にオンラインでやりますから、東京の会社が全国のいい学生さんを全部奪って、各地域のトップ企業が奪われている現象が出てきています。結果、学生さんは本当は地方で働きたい人が増えているのに、東京の会社の方が採用活動をうまくやっているから東京一極集中になっているという、採用の観点から見ると、そんな感じがするんですね。
 さて、就職活動が今日のテーマでして、学生の就職活動がどうなっているかと言いますと、こういう企業側は弱くて、学生さん側が強いとなると、企業側が途端にがつがつし始めるわけですね。ですから、選考を早くやっていこうということになって、早期化がどんどん進んでいるという状況です。現状では、3年生の3月に広報を解禁、4年の6月に選考、10月に正式内定解禁というのを要望しています。ただ、これは要望でして、ちょっと前までは経団連が「われわれもそうします」って宣言していたんですけれども、もう企業側は宣言はやめて、早期化が始まっていまして。
 リクナビとかマイナビなどのいわゆるメガ就職ナビというが開くのは、この3月なんですね。3月になってからスタートするはずなのに、もう半分以上の学生がそれ以前に企業の面接を受けていますし、4割の学生がすでに内定を取っている感じです。内定を取ったからといって、すぐに就職活動をやめてしまうわけではないのですが、公には3月1日に就職活動スタートですけれども、そのときには4分の1はすでに決まっていると。日系大手は3月以降を守っているところもまあまあ多いですが、だいたい外資系とかメガベンチャーといわれるような新興大手は早い傾向がある。こんな状況でまず一つ、特徴としては早期化というのがあります。
 あと、だいたい企業側から見ると、内定受諾率というのは、2人に1人しか来ないというのが平均になっています。だから、せっかくいろいろ集めて、説明会があって、選考をやって、ぜひうちに来てくださいと内定を出したとしても、だいたい2人に1人ですね。しかもこれは平均なので、先ほど言った人気企業、大手企業、有名企業はたぶんもっと低いんですね。99・7%を占める中小企業さんでいうと、たぶん3人出してようやく1人来てくれるかどうかです。
 なので、内定受諾率が下がっているということもあって、「オワハラ」と言いまして、「就職活動終われハラスメント」というのがあって、自社が内定を出した学生に対して、「おまえはもう、うちで終わって、就活をやめろ」と脅すみたいなハラスメントというのがあって、これは流行語大賞にもノミネートされているぐらいはやったんですけれども。
 というようなことが問題としても起こっているぐらい、企業側でいうと本当に疲労困憊しているという感じですね。こんなに内定受諾率が低いような状況っていままでになかったので、だいたい3人に1人しか採れないということは、要は内定を3倍出さないといけないんですけれども。中小企業とかって、採る人数もそんなに多くないわけです。10人採るときに、数字では3倍ぐらい出しておかなければいけないというのは分かっていたとしても、30人に内定が出せますかという話ですね。30人に内定を出して、もし何か全員来ちゃったらやばいですね。本当にここはものすごく悩みの種になっているところなのじゃないかなと思います。
 特に学生さんの側を見ていても、普通、内定を1個もらって一応取っておいて、次の会社も受け続けて、ちょっといま持っているものよりも志望が高かったら、こっちを辞退して、次はここを持ち続けてみたいな、そうすると思いませんか。ところがいまの学生さん、とくに今年の学生さんは、4社も5社もずっと内定を持ち続けているんですね。結婚する比喩でいうと、ずっと5人と並行して付き合っているみたいな状態で、とんでもないような状況が起こっているんですけれども。
 ただ、これは学生さんをべつに非難するわけではなくて、オンライン面接とか早期化の影響かなと思っていまして。やはり肌で感じていろいろ人と会って、会社にも行ってというと、結構心の中の確信的なものとして、この会社でいいやと、この会社で決めようというのが分かると思うのですけれども、全部オンラインで最終面接もオンラインだと。しかも早期化なので、ぱぱぱっとあっという間に決まってしまうわけですね。それならどれが一番いいんだろうみたいなところというのも、自分の心に聞いても分からないみたい。だから、本当に四つも五つも内定を持ちながら、学生にこの中でどっちがいいとかってないのって聞くんだけれどもね。「いや、本当に内定をもらったんですけれども、本当に迷っているんです」みたいな人も多いので、たぶん学生さんを支援する側も結構大変なんじゃないかなと思います。
 以上が新卒採用市場の状況なんですけれども。ここからこの状況は、学生さんにとってはいいのかを検証していこうと思っておりまして、ぶっちゃけ言うと、落とし穴が三つほどあるんじゃないかなと思っています。
 一つ目は、さっきも業界によっても見ていただきましたけれども、大手企業というのは、結局、いつでも買い手市場ということです。なんなら京大を出ていようが、東大を出ていようが、人気企業、大手企業は普通に落ちます。

 例えば、5000人以上の企業では、いま、0・34倍ということなので、希望者の3人に1人しか入れないわけです。しかも、私はコンサルティングとかやっているので、合格率とか見せてもらっているんですけれども、大手企業の平均的な合格率はいまでも100倍ぐらいです。異常な数です。
 だいたい大企業の平均的な選考回数というのは4回ぐらいなんですね。4回で100分の1に学生を絞ろうと思ったら、割り戻すと、1回当たり30%の合格率の試験を4回突破したら、「1%≒30%×30%×30%×30%」でようやく内定が取れるという、いまこんな時代です。だから、バブル期にイメージがある方だと、またあの売り手市場が来たのかという感じがあるかもしれませんが、そんなことはないんですよ。
 例えば京大生って、僕が見ている国公立の中で言うと、一番就活を頑張っていないんですね。何かふわっとしていて、「鴨川に結界が張られているんです」みたいなことを学生が言っていて、全然出てこない。大阪で説明会をやっても、大阪まではちょっと行けませんみたいな。京大生は京都駅なんて絶対行かないですから、京大の近くのすごい古いところで、有名な企業もやっているんですね。だから、例えば大手の有名企業で名前のあるところを3、4社だけ受けていて、「あれ、俺、全部落ちちゃったわ」みたいな人が4年生の中にいっぱい出ているはずです。ちょうどいまですね。5月の末がピークだったので、そろそろ大企業の採用は終わってしまっているんですね。
 企業側からすると、その人たちを狙い撃ちしようとしている集団がいて、いまスカウト型採用というのがあるんです。普通は、企業が広告を出しているのを学生が見て、検索して、いいなと思ったら応募するじゃないですか。ところがスカウト採用は逆なんですね。学生側のアピールを企業側は一生懸命毎日検索をして、よさそうな人がいるとなったらスカウトを打つみたいなやつがありまして、ある大阪の会社がもう25万人ぐらい登録がありまして、就職活動学生ってだいたい40万人なので、ほとんど一大メディアになっているんです。その新規登録者数は、最初のころに多くて、徐々に減っていくんですね。あと、内定をもらったらやめるので、登録者数というのは減っていくんですけれども、いまの時期、ちょこっと上がるんですね。大手落ち組と言って、大手企業しか受けていなくて、ぼうっとしていた人が、「あれ、落ちちゃった」みたいな人が焦って登録し直す。最近だとそれを目掛けるんですね。つまり、最近登録した人だけで検索できるんです。あるいは登録した期日順に並べて、例えば、最近このメディアに登録してきた京大生ばかり片っ端からスカウトを打つみたいな。そうすると「溺れる者は藁をもつかむ」じゃないんですけれども、なんか手を伸ばしてくれている企業があるみたいな感じで結構うれしい、みたいなこともあったりします。

 なので、先ほど言いました、大手企業はいつでも買い手市場だということになるんですが、こちらの学生の活動量の平均をみていただくと、エントリーシート提出16社、適性検査で10社、面接で14社しか受けていなくて、全然活動していないんです。例えば、昔だったら、OB/OG訪問って、結構やっていたような気がするんですけれども、いまは実施率4割、6社7人ぐらいしか会わない。会社説明会も対面で集めてと言ったら、5社しか行かないんですね。あと4割がオンラインだと15社ということなので、こういうリアル場で会社説明会をするのはもう非常識になっています。学生からすると、リアルな会社説明会があるから来いなんていうところには、もう行かないってなっているんですね。なんなら徐々にオンラインの会社説明会も嫌になって、学生が来なくなってきているんです。例えば会社説明会でパソコンの前に2時間張り付けられるのが嫌だと。ライブで配信していると2倍速で見られないんですね。結局、動画をきれいなやつを取っておいて、いつでも見られるようにアップしておいて、ダウンロードとかやって見てもらうじゃないと会社説明を聞いてくれないわけです。実際、そういうふうに企業がすると、一番学生さんが見ている時間というのが、だいたい夜の11時ぐらいです。イメージすると、スマホを見ながら、ベッドに寝転びながら、2倍速で会社説明会を聞いているのが、いまの会社説明会ということになっていまして。それぐらいやらないと、学生側に企業の情報が届かないということです。
 あと、エントリーシートも16社と書いていますけれども、エントリーシートは昔だったら履歴書とかだったと思うんですけれども、学生はこれが一番嫌で。エントリーシートを課されるんだったら、もう行かないみたいなところも増えているので、エントリーシートはどんどんやめる会社が増えていますね。あと適性検査、面接も、対面で来いというところだと5社で。ということになってくると、やっぱり最終面接までオンラインでやる会社というのも全然珍しくなくなってきているという感じです。
 一方で、インターンシップだけちょっと活性化していまして、30年前ぐらいはそもそもなかったと思うんですけれども、長期休暇を中心に8月とか12月の年末年始とか、合計すると9割以上の学生がインターンシップ、つまり仕事とか職場の疑似体験みたいなことをやります。
 あと、最近、インターンシップの採用時の利用解禁も増えていまして、要は青田買いの許容みたいな感じですかね。3年の夏休みにインターンシップをやって、いい人には先に声をかけて、早期選考をやって内定を出す。変な言葉ですけれども、内定は10月1日正式内定ということなので、「内内定」と言う、どこまで契約なのかというのもあるんですけれども、内定を出すよという内定を出してしまうわけです。
 ただ、インターンシップというのは、受け入れ負荷もすごく企業側は高いんですね。5日とか社内に入れて世話をしなければいけないとなると、そんなにたくさん入れられない。100人とか200人とか採るような大企業とかでも、負荷はなかなかかけられないので、インターンシップの方が狭き門であることも結構あったりとかします。
 インターンシップに落ちても、本選考は普通に受かるという人はいくらでもいます。インターンシップなんて、まだ学生が準備できていないし、企業側も粗い選考をして、入れる・入れないとか決めているので、インターンシップに落ちたって本当は大丈夫なんだよ、というのは学生さんと触れられている方は言ってあげていただきたいんです。この初期に大手企業、人気企業のインターンシップばかり受けて、ぼこぼこ落ちまくる人というのが毎年いるんですね。初っぱなから出ばなをくじかれて、自己効力感とか自己肯定感が落ちてしまうみたいな人が増えてしまって、就活をやる気がなくなったみたいな人が出てしまうのが結構問題かなと思いますので、ぜひそこはサポートしてあげていただくといいかなと思います。
 あと、中小ベンチャーとかにインターンシップすることのメリットもあります。ぜひ周りに学生さんが就職活動をやっているという場合に、中小ベンチャーのインターンシップはいいぞと言ってあげていただければと思います。最近のベンチャー企業は昔とだいぶ変わって、大企業出身者だらけです。基本、大企業出身者がベンチャー企業をつくっていると言ってもいいと思うんです。例えば、私がいたベンチャー企業で50人ぐらいの会社だったんですけれども、その50人はいろんな大企業出身の人たちでできているので、そこにインターンシップに行くと、1粒で50粒おいしいみたいな感じで、いろいろな会社のことが聞けるわけですね。だから、面白系のベンチャーに行くと意外といろいろな人がいます。
 あと、大企業への紹介につながる可能性があるというのも、なかなか一般には知られていないです。大企業で、リファラル採用という仕方がはやっています。何のことはない、昔からあるやり方で、簡単に言うとコネ採用です。ただ、コネ自体を重視しているということではなくて、社員とか、内定者とか、あるいは最近だと退職した後の人たちのネットワークを使っています。
 なんで大企業が人を介した採用をやっているかというと、これは「人気企業の敵は人気企業」という言葉がありまして、どの企業も自分のファンを採りたいわけではなくて、活きが良い人を採りたい。いい会社かもしれないけれども古くさそうだから僕は嫌です、みたいな感じの人に来てもらいたかったりするわけですね。そうすると、ネットワークを通じて、先輩から「うちのあれ、来いよ」って引っ張って、大手企業とかでもリファラル採用というのをやっているわけです。
 あと、小さな会社でも業界大手企業との付き合いはたいていあって、業界を見ることって結構できたりするので、大企業ばかりインターンシップに行って心が折れるよりは、こういうところに行って業界を知った方が、最終的に行きたい大企業だったり、有名企業だったり、人気企業に行く確率も高くなるんじゃないかと思います。
 あと、そもそも「インターンシップ」という名称にこだわる必要はないと思っていまして、よく「インターンシップに一番入りやすいのは、インターンシップを募集していない会社だ」という言い方をするんですけれども。インターンシップを募集していない会社に「info@」とか「recruit@」みたいなところで、駄目もとでダイレクトメールを打つと、めちゃくちゃ目立つんですよ。そうすると、なんか変なやつが来たみたいな感じになって、「おまえは面白いからちょっと来るか」みたいな話になってインターンシップに入れたり、という裏技もあります。
 なので、一つ目の落とし穴というのは、売り手市場ではあるものの、大手企業、人気企業、有名企業はいつでも買い手市場ということは、覚えておいた方がいいかなということでございました。

 二つ目はスカウト型採用シフトですね。先ほどちょっと申し上げた、学生さん側が登録をして、企業側がそれで検索をしてスカウトメールを打つ逆求人が、いま、どんどん増えています。この2年で23・2と24・7%なので、いまスカウト型採用をやっている会社の半分が、この2年でどどどっと入ってきているというようになっているわけですね。
 スカウトの反対って言ったらオーディション型かなと。めちゃくちゃ履歴書がたくさん来て、その中から選ぶみたいなことがオーディション型の採用。しかし、学生さんが全然動かない、リアルで説明会をやるだけで「行きたくない」って言っているような状況でどうしなきゃいけないかというと、企業側はスカウト型、こっち側から行かなきゃいけないわけです。これはもう当たり前だと思うんですよね。来てくれないんだから、こちら側からスカウトメールを打って、「うちと会いませんか」とか「こんなイベントがあるんですけど、来ませんか」って言わなきゃいけない。これによって、排他的な採用に再びなってきているというが、いまの問題点でございます。
 つまりスカウト型採用って、会いたいと思ってくれなかった人たちに対して、チャンスはどうなるんだということですね。並行していたらいいですよ。オーディション型採用とスカウト型採用を両方やっていますという会社も多いのですが、もうスカウト型採用のメディアも強力になってきていて、スカウトだけで30人とか40人ぐらいだったら採用できちゃうんですね。30、40人といったら、有名企業や外資系の日本支社みたいな会社とかだったら、十分なわけですね。もしそういう会社がスカウト型採用しかしていなければ、自分で受けようと思っても、どうやって受けたらいいか分からない。もうスカウトが来た人だけ受けられるみたいな状態になっているのが、いま問題になっていることです。
 学校間の機会格差とか、学校間だけではなくて、学部間もあります。ここは教育学部同窓会ということでちょっと生々しい話ですけど、もう明らかに法学部・経済学部の方がスカウトがいっぱい来るんですね。教育学部・文学部は、なんとなく企業側からするとビジネスっぽくないみたいな感じだと思われているからだと思うんですけど、全然スカウトが来ないです。理系でも似たようなことがあって、工学部はめちゃくちゃ来るんですが、理学部で、宇宙の研究とかしている学生には全然来ないです。なんかこう浮世離れしていると思われているのかもしれませんが。あと、農学部とかも微妙に来ないんですけど。要は、採用担当者のマインドシェアの中に入ってこないところは駄目です。例えば女子大とかかわいそうです。あんまりスカウトとか来なくなっていて、僕もお手伝いをしたことがあるんですけども、困っているんですよ。すごくいけてる、いい人はいっぱいいるんですけれども、なんとなくのイメージで、バリバリ働く人ってあんまりいないのかなみたいな感じでスカウトの対象にならないと。ということで、機会格差が生まれちゃっているんじゃないかなと。
 これはほっとおくと本当に加速していくと思っていまして、スカウト採用へのシフトはあんまり止まらないですね。もう来てくれないんだったら行くしかないって、ここから始まっていますし、学生は先ほど言ったように、就職活動に対しては怠惰になっているわけですね。だから結局、学生が動かないという学生の行動が、その学生にとってのデメリットである機会格差を生んでいるとも言えるので、なかなか難しい問題なわけです。
 他にも、適性検査の厳格化というのも最近あります。これまでだと性格適性検査は面接の補助手段ぐらいの扱いだったんですね。面接するときに一応何かデータがあって、「ここらへんが気を付けなきゃいけない」「ああ、じゃあ、ちょっとこういう質問してみようかな」という感じだったんですけども。学者の方、研究されている方からすると噴飯ものかもしれないですけど、最近「ピープルアナリティクス」って言葉が独り歩きしているんです。要は勘と経験でやっていた人事ではなくて、いろいろデータを分析して、例えばうちで活躍する人のSPIの波形はなんだろう、その性格にある程度一番近いような人を採っていこうみたいな感じで。結構、この適性検査だけで人を落とすことも出ています。もちろん昔ながらの学力とかを使ってぼこぼこ落とすというのもしています。
 これはなんでかって言ったら、内定受諾率が3分の1ぐらいですから、初期選考をめちゃくちゃいっぱい頑張るよりは、「いいな」と思って、顔が見えてきた学生さんをたくさん情報提供して、動機づけして、うちに入ってもらう。この活動の方が効果が高いんですね。そこにパワーを割きたいと。
 そうなってくると、これは大企業、中小企業、全部変わらないんですけども、もう適性検査で雑にがさっと落としてしまって、絞った人に対して丁寧に面接とか口説きをやっていくみたいな感じになっているわけなんですね。いままでだったら適性検査を受けた人の半分は面接にしていたところが、3分の1とか4分の1しか合格しない。
 能力テスト重視になると、これは学校の偏差値にだいたい相関するんですね。とすると、いわゆる偏差値的に低いところの学校群は、それで全部バーンと足切りされて面接にさえ進めないみたいなことが実は起こっています。
 あと、さっきのリファラル採用がどんどん増えれば増えるほど、企業にOB/OGがいる学校が有利になるわけですね。いないところは不利で機会格差が拡大しているというのが、二つ目のポイントでございます。
 学生側ができることとしては、何とかスカウトを打ってもらえるためにアピールを磨いたりとか、インターンシップですね。インターンシップも、大企業のインターンシップじゃなくて中小企業とかベンチャーとかのインターンシップに行って、顔を売って、その行きたい企業のOBとかに認めてもらったら紹介してもらうかもみたいな、こういうベタなやり方をしないと機会格差というのを超えられないなと思います。
 あとはすごい単純なんですけど、もう機会格差とか言っていないで、OB/OG訪問をやれという感じが僕はしているんですけどね。OB/OG訪問といっても、べつに違う学校のOB/OGでも全然企業側はまったく気にしていない。特にSNS時代ですから、自分が行きたいところの会社に所属している社会人を見つけることなんて簡単です。そこにDMだって打てるわけですから、やってみたらどうかと。
 あと、学校で働いていらっしゃる方が、企業とのリレーションづくりとか、推薦状を出してあげるとか。推薦状といっても「推薦します」とかだけじゃなくて、「この人はこんなことをやっていて」というのを追加資料として挙げて、エントリーシートと一緒に出しておけば、あるいは面接のときに出せば、とか。あと、学校発のイベントをやるとか。大多数の学校においては、学校側が対策でもしてあげない限り、機会格差の波にはのまれてしまう。
 私がお手伝いした大学発のイベントと言うと、情報経営イノベーション専門職大学という新設校で僕は客員教授をやっておりまして、いろいろキャリアセンターの方と一緒に、学生が行きたいであろう会社をリストアップしていただいて、キャリアセンターの方に営業してもらったんですね。100社の企業の採用担当者を集めて、僕が前座講演とかもさせてもらって、説明会をやってですね。新設校なのでどんな学生がいるのか採用担当者は分からないんですね。なので、もうとびきりの、その学年の中でピカピカの学生を6名出して檀上に座らせて、イケてる会社の採用担当者が集まって、僕がイベントで公開面接みたいなインタビューをして。そしたら、彼らはすごかったんです。新設校とかに行く1期生の人って、やっぱり面白い人が多い。そういうようなことを見ていただくとイメージが変わって、スカウトの対象になるかもしれないですよね。
 あと、先ほど言った女子大がなかなかスカウトされないということで、8校ぐらいの女子大の方々と組んで、いろんな大きい企業さんとマッチングイベントをやったり。実は、就活の機会格差がスカウトによって起こっているということを気付いて、やっていらっしゃる大学とかキャリアセンターの方というのも、いるということです。
 このように、「売り手市場だからいいわ」というわけではなくて、売り手市場だから企業は頑張らなきゃいけない、だからスカウト採用になる、だから機会格差という、こういう流れが起こっているわけでございます。

 ちなみに、学生側の対策として「履修履歴のアピール」って書いていますけども、学生は全然学業の話をしないんですね。学業にはインパクトがないと思って話していないと。でも、いまは学校の授業もだいぶ進化していて、本当に面白い授業とかやっていると思うのに、なんかいまだに学生は、面接で話すことは全部課外活動。クラブ、サークル、アルバイト、学生団体、この話をしなきゃいけないみたいに思っているので、「いや、そんなことないよ」って表現の仕方とか教えていただければと思います。
 あと、これも何十年と変わらないので難しいなと思うんですけど、経営者や人事部長は、いわゆるコミュニケーション能力の高い人が欲しくて、主体性があって、挑戦心、チャレンジ精神がある人がいいとかって言うんですけども、言葉の定義がむちゃくちゃです。企業側の人事が駄目なんですけども、たとえばコミュニケーション能力って何でしょうか。
 いろんな使われ方をしていまして、例えば論理的に物事を分かりやすく丁寧に話すみたいな、極めて論理的思考能力に近いようなことをコミュニケーション能力って言っている会社もあれば、空気を読めるみたいな、あうんの呼吸で以心伝心みたいなのを言っている場合もあれば、クリエイティブな表現力みたいな、これをコミュニケーション能力と言っている場合もある。これは全然違う能力なのに、コミュニケーション能力と言っているわけですよね。
 挑戦心とかもそうです。新しいものがあったら、バーンと飛びつくという挑戦心と言っている企業では、ChatGPTが出たらバーンともう使い倒すみたいな感じでやっているみたいな人のことを言っています。でも、別の企業ではやりきる力、高い目標を掲げてやりきるというのが彼らの挑戦心なわけですね。どうです?好奇心的な挑戦心と、やりきる力の挑戦心、まったく違いますよね。別の企業は向上心みたいなことのことを挑戦心と言っていますし、また別の企業は「常識を疑え」みたいな感じで変革力のこと言っています。
 こういう言葉が全然そろっていないので、企業側と学生が何を言い合っているのかが、はっきり言って分かっていない状態なんですね。お互いが多義的な言葉で、学生は自分をアピールするし、向こう側もふわっとしたことで言っているしということで、これで本当にベストマッチになるのかというようなお話ですね。
 適性検査がなんで増えているか、適性検査を本当にどこまでやるのかという話もあります。ある本で、いろんな選考手法の中で妥当性が一番低いのが面接だと言っているんです。なんなら能力試験の方が高い。あと、ワークサンプル、インターンシップがはやっている理由でもありますけど、実際に入ってからやる仕事をさせて、成果を見るのが一番高い。あと、適性検査を初期に入れると、いろいろ採用の分析ができるというのもあるんですね。欲しい人が採れていないといっても、来ていないか、逃げられているか、落としているか、いずれかなわけなんですけど、それによって本当は採用の対策って変わってくるわけです。問題の解決の対策というのが。それもあって、初期選考の方で適性検査を入れて、どばっと、ぐさっと切って、不合格を出して、面接はちょっとしかやらないみたいなことになるんですけど、これもかなり格差になってくるというふうに思っています。
 ちなみに、AIの採用への使い方なんですけど、GDPRというEUの個人情報保護データ規則がありますよね。その中で、人に対して重要な判断が下されるところを、完全にAIに任せちゃいけないというルールがあります。ある企業が、エントリーシートをAIで読ませて、もともと人間が○×を付けた教師データを基に合否を判定し、不合格とAIが出した人は、人間がもう一回見て面接に上げることでGDPRはクリアというんです。そもそも問題点としては、人間が見ている見方が精度が低いのに、それを教師データとしてAI化してどうなんだといろいろあって、AI採用は言うほどなされていないのが現状です。
 特に人事系ってデータが不完全です。例えば採用時の評価と入社してからの評価というのが相関しているのかどうかというのを見ようと思っても、採用時の評価が高い人は、よそに逃げられている可能性が高く、採用時の評価が低い人は採らないじゃないですか。だからその上と下を切った残りのデータでやるしかないんですけど、だから相関も何も出ないことが結構多いんですね。でも、不合格の人を「ごめんなさい。 ちょっとデータを取りたいので、うちで5年だけ働いてくれる?」とかできないじゃないですか。なので、現時点ではまだまだ様子見という感じでございます。
 最後は、内定を四つも五つも持ったまま悩んでいる人が出る原因でもあるかと思うんですけども、早期採用で、しかも自分から行くんじゃなくて企業側から「来てくれ」「来てくれ」と言われるようなモテモテ状態になっている状況の中で生じていることは、何がやりたいかをきちんと考える前に企業側のアプローチを受けて、本当にやりたいことというのがいったい何なのかが、分からなくなってしまうこと、これが三番目の落とし穴です。
 むしろ企業側に「あなたはこれに向いているじゃない?」とかいろいろ言われて、「そうかもしれないですね」みたいに根っこの生えてないWILLを自己洗脳してしまうのでしょうか。そもそもまず20代前半の学生さんとかって、「これがやりたい」という確固たるものを持っている人は1割とか2割ぐらいかなと思うんです。そのときに大人たちが寄ってたかって、「あなたはうちの仕事が合っているはずだ」とか、「あなたはこういうことがやりたい人なんじゃないか」とか、「こういうのが出ているよ」みたいな感じで言われると、どうしても、この売り手市場だと誘われて乗っかってしまう。そして、自己洗脳して、根っこが生えてないようなWILL、私は「捏造されたWILL」というふうに言っていますけど、それにかこつけてしまって悩んでいる。要は内定をもらったりとかしたものの、「いや、ここで本当によかったんだっけ」というような状態になってしまうということなんですね。
 これはどちらかというと、学生側を支援している側、大学の先生であったりとか、保護者だったりとかの方々が、本当はやってあげなきゃいけないのかなと思います。例えば本当に、そのWILL、やりたいということに根っこがあるかというのは「きっかけ・意見・行動」を聞いています。
 例えば環境問題に興味があるという学生から「環境問題に対してプラスの貢献している、こういう事業をやっている御社に行きたいです」って言われて、それが本気かどうか、本当に頑張るのかを聞くために、まずきっかけを聞くんです。「なんでまた環境問題みたいなものに興味を持ったの」と。「こういう環境で生まれ育った」とか、「こういう出来事があった」とか、「こういう人に出会って影響を受けた」みたいなことを聞いて、「なるほど、そんなきっかけがあったんだったら、そりゃ環境問題に興味を持つよね」って思えるかどうかで、まず確認するんですね。
二つ目に意見、その領域におけるビッグイシューですね。例えば、環境問題に興味があるんだったら、電気自動車とハイブリッドカーの問題や、自然エネルギー。例えば、洋上風力や地熱発電、メガソーラーについてどう思うみたいなことを聞いてみて、何か言えるかどうか。合っているかどうかは二の次で、考えているかどうかですね。その興味ある領域のビッグイシューについて何も考えていないというのは、「それ、興味あるの?」って話です。
 三つ目に行動、小さいことでもいいから何か行動に移していることはありますかというので、何でもいいんですよ。例えば、環境問題に興味あるんだったら「ゴミの分別を頑張っています」みたいなのから、「月1回、浜辺に行ってゴミ拾いをやっています」とか、「SDGsの資格の勉強をしています」とか何でもいいんですけども、好きなのに、やりたいのに、行動に移さないって、ないですよね。 というので、「きっかけ・意見・行動」で見るわけなんですけど、学生さんが自問自答してみればいいと思いますし、誰かが聞いてあげることによって、本当にやりたかったことというのが出てくると思います。

 例えば、「安定か成長か、どっち?」みたいな感じで言われても分からないんですけど、安定している会社に多い特徴や、伸びていくかもしれない会社の多い特徴をこうやって分解して考えて○×△とか自分で付けていくと、安定している会社がいいかなと思っていた人でも、実は成長企業の方が向いているとかみたいなのもあります。

 ほかにも、大企業と中小企業のよさって対照的なものだったりとかしますけど、例えば大企業というのは、分業の会社なので全体感があんまり見られないとかですね。スペシャリスト思考だったらいいかもしれないけど。こういう特徴を見てみるというのもあります。
 あと、心に聞くみたいな話もあると思っていまして。要は理屈、頭で考えすぎだなと。最近はデータとかいっぱいありますので、それを合理的に考えて、ここの方が伸びそうだから行くみたいな感じで、まるで株を買うかのように企業を分析して、どっちがいいだろうみたいな感じになっている人が結構多い。それはそれで大事な観点かもしれないんですけど、やっぱり最後は好き嫌いとか、価値観とか、文化にフィットしているか、というのがあるわけですね。
 と考えると、頭ばっかりで考えずに、心に聞くと。まず、例えば人気企業ランキングみたいな、著名な企業ばっかり載っているリストを見て、どれが気になる、気にならない、絶対に行きたくないとかって、もう直感でいいので分けていくわけですね。その後で、好きだと、いいなと思った企業の共通点は何かというのを頭で考える。
 その部分というのは、アウトソーシングもできるわけですね。キャリアセンターの方とか、先輩とか、親とか、例えば人材紹介会社のキャリアアドバイザーとかに言ってもいいかもしれません。ただ、こういうのは、ほとんどの人がやらないので、やっぱり早期にがつがつ来られる波の中で、自分が何をやったらいいか分からなくなってきてしまうというのが起こっているわけですね。
 あとぶっちゃけですね、ジョブ型採用とか職種別採用とかいっぱい出ていますけれども、これは良くも悪くも、いまだに企業側って、ジェネラリストというか、何でもやってみようという人を求めているんですよね。
 クランボルツさんの「計画された偶然性理論」とか、Planned Happenstance Theoryとかありますけども。ごく簡単に言うと、いけてるキャリアを歩んでいる人というのは、結構、キャリアデザインしたものを一歩一歩登ってきたというよりは、ノリのいいオープンマインドのキャリア選択をしてきたと。なんか全然考えたことがなかった会社だったけど、ちょっとこれもご縁だと思って行ってみるかみたいな感じで、好奇心とか柔軟性とか、あるいは楽観性とか、こういう性質の方が、オープンマインドに来た船に乗る、チャンスを逃さないみたいな感じでやっている方がいいというようなことも、人事の人はみんな常識みたいな感じで分かっているわけですよね。
 ということを考えると、学生さんは何か軸がないと駄目というふうに思うかもしれませんけど、別に貢献欲求だけでもういいんですよね。何か具体的にやりたいということはなくても、なんか自分の力とか性格とか役に立てるものだったら、何でもいいというふうに思っても、それを企業側も全然オーケーだというふうに思っているわけでございます。
 だから本当ならば、強い志望動機とかなくても、自分はこんな選社基準で会社を考えておりますと。それが御社に当てはまるんだったら、ぜひ採ってくださいみたいな、ぐらいの感覚でやっていけばいいんじゃないかと。
 学生さんたちは、本当は根っこも生えていないようなWILLに縛られて、自分のチャンスを逃してしまったりとか、狭い視点で自分の人生を決めてしまうとか、四つも五つも内定をもらって最後決める軸が全然見つからずに悩むみたいなことにもなりかねない。ここらへんはサポートしてあげる必要があるのかなというふうに思っております。
 皆さん、ご清聴ありがとうございました。
(終了)




 

 

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